建売住宅のイメージといえば、安い家という言葉が思い浮かぶ人は多いようです。建売は安いから大丈夫だろうかと心配している人から相談を受けることは多いですし、買ってから後悔している人から相談が入ることも多いです。
安物だから仕方ないという人もいますが、果たしてそうなのでしょうか?
建売住宅の安さとその理由や安い建売住宅を購入して後悔しないための対応策について解説します。きちんと業界の状況を把握して対応策を取りさえすれば、建売の購入も悪くないことをわかってもらえることでしょう。
1.「建売住宅=安い」とは限らない
そもそも建売住宅は本当に安いのでしょうか?
「建売住宅=安い」というイメージは根強いですが、実は建売にもいろいろな物件があり、そうとも限りません。また、都市部では土地代が高いので建物が安くても売買価格は高くなってしまいます。建物より土地の代金の方が相当に高いという物件は非常に多いのです。
1-1.大手ハウスメーカーの建売は高い
建売住宅の建物価格だけを考えたとしても、大手ハウスメーカーが分譲している物件は決して安くありません。ハウスメーカーといえば土地を持っている人などが発注する注文建築をイメージする人が多いですが、建売住宅を分譲しているケースも多いです。
駐車場跡地や畑だった土地などを開発して、多くの区画を用意し、そこに建売住宅を建てて売るというものです。分譲地によっては注文建築用地と建売とが混ざっていることもよくあることです。
この大手ハウスメーカーの建売住宅は、注文建築よりは安いことが多いですが、それでも高額物件になっていることが多いです。ローコスト住宅を売りにしている業者が、建物の坪単価35~50万円くらいであるのに対して、65~80万円くらいで分譲しているものをみかけます。
建売とは言え高いですね。
1-2.やっぱりローコスト住宅は多い
ただ、大手ハウスメーカーの物件を除いて販売されている物件の価格を見ていくとローコスト住宅の供給数が多いことがよくわかります。2000年頃は建物の坪単価55~60万円くらいの物件が多かったのですが、今では前述のように35~50万円まで下がっているのです。
建売を買う人にとっては、安くなったのは嬉しいことですね。しかし、同時に安いだけに大丈夫だろうかと心配する声も多いわけです。
1-3.安くできる理由
安い建売が大丈夫かどうか知るために、まずは安くできる理由を知っておく必要があります。いくつも理由はあるのですが、その主だったものは以下のとおりです。
- 仕様レベルを抑えてコストダウン
- 資材調達の工夫でコストダウン
- 土地仕入れでコストダウン
- 人員を削ってコストダウン
仕様レベルを抑えているのは、大手ハウスメーカーの物件と比較すればよくわかります。しかし、それは良いものと比べているということでもあり、贅沢な考えかもしれません。今の建売住宅は、仕様レベルを抑えているとはいっても普段の生活のなかでそれほど問題を感じるレベルではありません。
建築資材や設備等の調達は、大量仕入れによってコストダウンを図っていることなので、買主には単純にメリットになります。デザイン性が均一化するというデメリットはありますが、強いこだわりがないならば妥協できるポイントかもしれません。
土地仕入れを工夫することでコストダウンしているのも、その立地・環境が買主にとって問題ないのであれば、気にすることではありません。面積が大きな土地は、そのままでは住宅地として適さないために安くなります。建売分譲業者がそれを仕入れて分割・整地するなどして建売用地にすることで、マイホーム購入者へ供給されるわけです。
但し、田んぼだった土地や斜面地を開発した土地で盛り土している土地ならば、地盤とその対策に問題ないかきちんと確認してから購入したいものです。
最後に挙げている人員を削ってコストダウンという点が、買主にとって最大の問題で心配すべき点です。これについては、詳細を後述します。
2.安い建売住宅で心配な理由
安い建売を購入することに対して心配する理由は、はっきりしています。それをここで解説しておきます。
2-1.手抜きが多いというイメージ
安い物件というのは、手抜き工事が多いと思っている人が多いようです。安いのには理由があり、それが手抜きだという論理です。
確かにそういう一面はありますが、前述したように、仕様レベルを抑えることや資材調達や土地仕入れの工夫による恩恵の部分もあることは理解しておきましょう。建売だからといって、どれも手抜きしているというわけではありません。
2-2.確かに現場任せで監理していない
ほとんどすべての建売住宅の建築現場は、工事監理者が不在です。工事監理者とは、本来は図面通りに建築しているか、施工品質に問題ないかといったことを確認する立場なのですが、この業務を適切に実行している安い建売住宅の現場はありません。
さらに、現場監督がきちんと教育されていない上に人員不足で時間がないため、現場で施工品質を確認することもできません。そもそも、工程の進み具合を管理するだけが役割だと思っている人も多いくらいです。そのうえ社内検査体制も形だけで適切に運用されていることはありません。
こういった品質管理や建物の安全性確保のための人員を適切に配していないことから、現場任せになり、その結果として多くの建築トラブルや欠陥工事が生じてしまい、その話が世間に伝わっていくことで、「安い建売住宅を買っても大丈夫だろうか?」と心配する人が多くなっているのです。
2-3.何もしなければ大丈夫ではない
品質・安全に対して必要な人員を配していないわけですから、何もしなければ大丈夫とは言えません。運任せになってしまいます。建売の購入が博打みたいなものでよいはずがありませんね。
安い建売住宅を購入するのであれば、きちんと対応策を取らなければなりません。これを怠らなければ、安全度はあがります。
3.安い建売でも安心するための対応策
それでは、安い建売住宅を購入するときに買主が安心するために取るべき対応策を紹介します。ここが肝心なところです。
3-1.仕様レベルは妥協できるか?
安い理由の1つに仕様レベルを抑えているという問題がありました。これは、あなた自身がその仕様を妥協できるかどうかの問題です。レベルを抑えているとはいっても、普通に暮らしていくうえで問題があるわけではありませんから、考え方次第では全然問題にならない人が多いのではないでしょうか。
3-2.手抜き対策は第三者の専門家を活用
問題は手抜き工事への対策です。品質の管理を怠っていることが原因ですから、思い切ってその点のみは第三者の専門家に頼る方法が効果的です。専門家に依頼することで費用はかかるものの、それで安心を得られるならば投資効果は高いでしょう。
建物の専門家は建築士です。できれば、住宅の経験が豊富な一級建築士に依頼するとよいでしょう。
3-3.専門家を活用してもまだ安いのはメリット
専門家に依頼するとコストがかかるものの、そのコストを建売住宅の売買価格にプラスして考えても、大手ハウスメーカーの物件よりも大幅に安いでしょう。ローコスト住宅を購入する魅力の1つでもあります。
完成物件を購入するならば、売買契約の前に「新築一戸建て住宅診断(建売のホームインスペクション)」、既に契約済みで引渡し前なら「内覧会立会い・同行(竣工検査・完成検査)」、これから建築する(又は工事中)なら「住宅あんしん工程検査(建築中の住宅検査)」がお奨めです。
ちなみに、既に購入して居住されているならば、早めに点検して見つけた不具合を売主に伝えて補修を求めるため、「住宅の点検・建物調査(一戸建て)」を利用するとよいでしょう。